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未来をつくる「メタバース」と自動車メーカーは共存できるのか?

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未来をつくる「メタバース」と自動車メーカーは共存できるのか?

メタバースとは、仮想空間。分身としてのキャラクターを作って参加する

2021年にインターネット業界では「メタバース」がバズワードとなった。「メタバース(metaverse)」とは、英語の「超(meta)」と「宇宙(universe )」を組み合わせた造語である。もともとは、90年代のあるSF小説で架空の仮想空間の名称として登場した言葉だが、その後、現実世界での仮想空間サービスの総称として定着していった言葉と言われている。メタバースの定義は様々だが、ユーザーレベルでいえばリアルな3D仮想空間において自分の分身であるアバターを使って楽しめるサービスを意味していると理解すればいいだろう。

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『フォートナイト』などネットワークゲームの世界から始まったメタバースだが、より日常的なサービスに広がりつつある。facebookやInstagramの運営会社も「META」と企業名を変えたほどで、もはやメタバースに関わっていなければ企業の成長は見込めないというムードも生まれている。

仮にメタバース的な3D仮想空間をベースにしたSNSが生まれれば、参加者はアバターを作って参加することになる。そのアバターはリアル(現実世界)の自分と同じ年齢・性別にする必要はないだろう。仮想空間で、架空のキャラクター同士がコミュニケーションをする。しかし、その背後にはリアルな人間が存在する。という世界が実現するのだ。ちょっと古い例えになるが、映画「マトリックス」のような世界が、同時多発的に生まれてくると考えると、メタバースのある世界がイメージしやすいかもしれない。

日産はメタバース空間で新型EV軽自動車サクラのお披露目や試乗を行うなど、積極的にメタバースを活用している。2000年代にブームとなった「Second Life」は元祖メタバース

2007年、Second Lifeがブームとなった時には
メルセデスを試乗できるアイランドもあった。とはいえ、3Dの仮想空間にアバターを作って参加するというアイデア自体はけっこう昔からあるものだ。
例えば2000年代に一大ブームとなった「Second Life」は元祖メタバースとして再評価されているという。Second Lifeというのはユーザーが独自にアイランド(島)を作り、そこに自由に建造物やモビリティなどのアイテムを追加していくというものだった。ユーザーは空を飛ぶようにアイランド間を移動して、アイテムを利用したり、また他のユーザーとコミュニケーションをとってみたりして会話を楽しむという仮想空間だった(サービス自体は現在も続いている)。

実は筆者も日本でブームとなった2007年頃にアカウントを作って、Second Lifeを楽しんでいたことがある。上の画像は、当時メルセデスが作った新型Cクラスを試乗できるアイランドでのスクリーンショットだが、たしかにCクラスの運転席に座って、試乗体験をすることができた。

もっとも当時の技術力とパソコンの処理能力ではリアルな運転というわけにはいかず、インテリアの作り込みこそ、それなりにリアルだったものの、挙動自体は子ども向けのゲームのような操作感だった。いずれにしてもユーザーの入力はキーボードをベースとしたもので、カーソルで移動、テキストで会話というのは没入感という点では難もあった。それでもSecond Lifeが基本的にメタバースに必要な要素を示していたのは事実だ。

そして、現在のメタバース・ブームの中でもSecond Lifeと同じように自動車メーカーはプロモーションの場として利用している。もっとも実際のプロモーション効果よりも、2022年時点でメタバースを利用しているということがブランディングにつながる部分が大きいというのが本音だろうが……。

しかし、メタバースをプロモーションとして利用できる新しいチャンスと自動車メーカーが考えているのには一抹の不安もある。そこには、メタバースは自動車メーカーを不要にする可能性を感じるからだ。

ホンダのアバターロボットはメタバースに対抗するソリューションになり得る

ASIMOで培った技術を発展させたアバターロボットは、移動体験を提供するソリューションのひとつ自動車メーカーの存在価値を、根源的に追求すると「モビリティカンパニー」であり、移動手段としてのクルマ、物流のためのクルマを提供するというビジネスモデルと定義できるだろう。もちろん、一部のスーパーカーブランドに代表される工芸品を提供するという趣味人向けのビジネスも存在しているが、大筋で人が移動する手段を生み出すのが自動車メーカーの役割だ。

しかし、十分なリアリティを持ち、没入感のあるメタバースが普及した場合、極論すると人は移動する必要がなくなってくると考えられる。趣味のドライブや旅行をせずとも、いつでも、どこでも行きたい場所をリアルに感じることのできるのがメタバースの目指す世界だからだ。通勤通学や物流のための移動はなくならないだろうが、プライベートの移動のために、マイカーを持つ必要性を感じないユーザーが多数派になるだろう。

つまり、自動車メーカーが、クルマとしての操る喜びを追求したり、乗り心地などの快適性を高めたりして、自動車としての能力を高めていっても、そもそもユーザーは移動を求めないという時代が来る可能性が高いということだ。実際、モータースポーツについてもお金の掛かるリアルのレースよりもeスポーツの方が参戦コストは抑えられるし、ドライバーの怪我や失命の危険性もないということで、一部では盛り上がっているという現実がある。

メタバースのリアリティが現実と並び、まして超えるようなことがあれば、多くのユーザーはリアルの移動は最小限でいいと考えるようになるだろう。自動車業界は100年に一度の変革期といわれることも多いが、CASEどころの変化ではない。メタバースの時代において、モビリティカンパニーであれば、移動手段そのものの変革にも対応する必要がある。

そんな中、新しい移動手段として有力なアイデアと感じられるのが、ホンダが研究開発している「アバターロボット」だ。ASIMOで培ったロボット技術を応用して、触感のあるロボットの実現を目指している。目的地にあるロボットにアクセスすることで、あたかもその場にいるように感じることができるならば、わざわざ移動することもない。これはエネルギー消費の面からも、バリアフリーの観点からもウェルカムなテクノロジーといえる。移動の時間も惜しいくらい忙しい人にとってはアバターロボットの活用は有効なはずで、まずはビジネスシーンで広がっていくと予想される。

いずれにしても、こうしたリアルワールドをメタバース的に利用できるようにする技術が、これからの自動車メーカーに求められる。操る楽しみなど旧来の価値観にこだわって、時代の変化に対応できなければ消えゆくのみである。

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